弔事のお知らせは、思いがけないタイミングでやってくるものですね。
急な訃報に接し、驚きすら抜けない中でも、すぐに準備を始めなければならないのが弔事の酷なところでもあります。
「お通夜の服装マナーがわからない・・・。」
「平服って、どんな服装?」
「お通夜まで本当に時間がないんだけど、最低限のマナーを守って参列するにはどうすればいい?」
状況は人それぞれですが、やはり共通しているのは急だけれどもできる限りマナーを守って参列したいという想いではないでしょうか。
特に、服装はパッと目に入る部分ですから、礼を尽くすためにも相応しい装いで伺いたいですよね。
こちらの記事では、葬儀のなかでも「お通夜に参列される方の服装」についてなるべくわかり易く、丁寧に解説いたしました。
記事の後半では、訃報を受けてから参列するまでに必要となる情報についても簡潔におまとめしておりますので、適宜、お役立てくださいませ。
故人を想う場へ落ち着いて伺えるように、準備を進めて参りましょう。
お通夜の服装は、喪服がベスト
結論から言うと、お通夜に参列する際の服装は、喪服が望ましいです。
以前は、お通夜に喪服を着ていくと「準備して待っていたようで良くない」という声もありましたが、最近はお通夜までの日数にゆとりがある場合も多く、問題視されることはありません。
お通夜に相応しい「喪服」はどれ?
一番ちゃんとした喪服を着ていればとりあえず安心、と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、それは間違いです。
喪服は、その格式によって上から「正喪服」「準喪服」「略喪服(平服)」に分けられます。
正喪服は、喪主や親族が着用する最も格の高い喪服。
特に、正喪服のなかでも最も格上の「和装」を参列者が着用すると、喪主と同等・もしくは格上の装いとなってしまうため確実にマナー違反です。
ご注意ください。
また、お通夜での参列者の装いは「駆けつける」という意味から平服でも構わないとされていますが、最近ではお通夜にのみ参列される方も多く、準喪服の着用が一般的となってきています。
そのため、準喪服の準備がある場合にはそちらを着用するのが無難です。
結論として、お通夜では一般の参列者の方は「準喪服(最も一般的なブラックフォーマルウェア)」を着用するのがベストです。
喪服の種類と具体例
- 正喪服(親族が着用する喪服)
最も格式の高い喪服で、喪主や親族(三親等まで)の装い。
洋装の正喪服もありますが、日本における喪のシーンの最高礼装(最も格上の装い)は、和装です。
女性の正喪服:和装(ブラックフォーマルも可)
男性の正喪服:和装、モーニングスーツ - 準喪服(いわゆる喪服)
最も一般的で、弔事のシーンで幅広く着用できるフォーマルウェア。
和装にも、準喪服に該当する装いがありますが、他の参列者の方が和装のしきたりに詳しくない場合にマナー違反と見られたり、服装が浮いてしまったりすることもありますので、注意しましょう。
一般参列者としてご参列の際には、洋装が無難。
女性の準喪服:ブラックフォーマル
男性の準喪服:ブラックスーツ - 略喪服(平服とも)
準喪服より格下に当たる喪の装いで「平服」とも呼ばれるもの。
女性の略喪服:地味なお色味のスーツやワンピース
男性の略喪服:地味なお色味のダークスーツ
喪に服すシーンの装いマナー
喪に服すときの装いは、故人への敬意と哀悼の意を示す手段のひとつでもあります。
ポイントは、清潔感と落ち着きのある厳かな雰囲気を壊さないこと。
アイテムを選ぶときや身だしなみを整えるときに押さえておきたい、基本的なマナーも知っておきましょう。
- 着用するものは黒で、柄や光沢がないものを
黒のアイテムであっても、華美なデザインのものや光沢感があるものは避けます。
ブランドのロゴや大きく派手な柄が入っているもの、エナメル生地など光沢感のあるものなどはNGです。 - 男女ともに肌の露出は控える
女性の装いは、襟元、スカート丈、袖丈に注意。
男性は、靴下の丈に注意しましょう。 - 素材は、殺生を感じさせない革か布
靴やベルト、バッグなど、基本的に革で仕立てられているアイテムについては、革で仕立てられているアイテムを選んでもOKです。
シンプルなデザインで光沢のない黒のアイテムを選びましょう。
ただし、クロコやパイソンなどの型押しがされているもの、スエード素材のものなどは殺生を感じさせるためNG。 - 金具もないものが望ましい
弔事では、ゴールドの金具はNG。
黒の金具など配慮されているものか、もともと金具のないアイテムを選ぶのがおすすめです。 - 清潔感がある身だしなみを
男性の無精髭は絶対にNGです。
きれいに整えられているなら、髭があっても問題はありません。
女性は、控えめで全体的に色味の薄い「片化粧(薄化粧)」を施します。
紅を差さないのがしきたりで、赤の化粧品は避けます。
ノーメイクも華美なお化粧もNGです。 - 頭髪も黒にシンプルな髪型がベスト
黒髪や濃いめのブラウンであれば問題ありません。
派手な金髪やカラーの頭髪はスプレーなどで落ち着いたカラーにするのがおすすめです。
前髪が目にかかっている場合、髪を切るかヘアピンで留めるなどして目がしっかり見えるようにします。
また、髪が長い場合は、耳より下の高さでひとつにまとめましょう。
お通夜にベストな女性の装いは、ブラックフォーマル
黒で光沢感のない素材のワンピース、アンサンブル、ツーピース。
上下とも同じ生地で仕立てられたものがベストですが、黒のブラウスとスカートでも問題はありません。
喪服のデザイン
肌の露出を避けます。
スカート丈はひざ下からふくらはぎ程度を、袖丈は肘が隠れる5~7分丈を、襟元は詰まったデザインのものを選びましょう。
レースについては、黒で、縁取りなどのごく控えめなものであれば問題ありません。
また、刺繍も華美でなければOKです。
靴
黒で光沢感のない素材のパンプス。
デザインは、金具がなく、つま先の丸いもので、ヒールの高すぎないものを選びます。
また、ヒール幅は5cm程度の、ヒール音が響きにくいアイテムがおすすめ。
ストッキング
薄手の黒いものを選びます。
うっすらと肌が透けるくらいがベストです。
黒のストッキングは伝線してしまったときにとても目立つので、予備を持っておくと安心です。
タイツはカジュアルな雰囲気が出てしまうため避けましょう。
バッグ
黒で光沢がない、無地のシンプルなバッグを選びます。
革製でもよいですが、クロコやパイソンなどの主張があるデザインのものやゴールド金具のものはNG。
大きすぎるサイズもカジュアルになってしまうため避けましょう。
慶弔両用のハンドバッグをひとつ持っていれば安心ですね。
アクセサリー
何も着用しないのがベスト。
白または黒の真珠のネックレスはつけても問題ないですが、2連になっているものは「不幸が重なる」とされ縁起が悪いためNGです。
また、結婚指輪については着用していても問題ありません。
お通夜にベストな男性の装いは、ブラックスーツ
黒で光沢感のない素材のブラックスーツ。
ジャケットはシングル・ダブルどちらでも構わないですが、パンツの裾はシングルのものを選びましょう。
シャツ
白無地のレギュラーカラーシャツ。
色柄もの、ボタンダウンのものは避けます。
ネクタイ
黒で光沢感のない素材のもの。
もし持っていなくても、最近はコンビニなどで調達することもできます。
仕事帰りなどにダークスーツで参列する場合には、ネクタイだけでも黒に変えましょう。
ベルト
黒で無地のシンプルなもの。
革製でよいが、クロコやパイソンなどの主張があるデザインのものや、バックルが大きく目立つものはNG。
靴下
黒の無地。
座ったときに素肌の見えないミドル丈のものを選びましょう。
柄物は勿論、白の無地も避けます。
靴
黒の革のひも靴。
デザインは「ストレートチップ」がベスト、「プレーントゥ」でもOKですが、「ウィングチップ」は華美な印象になるので避けます。
羽部分は、内羽根式がベストです。
また、ローファーやスリッポンは革靴であってもひも靴ではないので相応しくありません。
お子さまも参列される場合
お子さまの服装は喪服でなくても構いませんが、どんな服装でも良いというわけではありません。
ポイントは大人の身だしなみと同じく、清潔感と落ち着きのある厳かな雰囲気を壊さないことです。
制服が正装の扱いとなる
学齢期のお子さまで制服がある場合、制服で参列するのが正装となります。
シャツや靴下、靴など指定がないものについては、大人の装いと同じルールを目安に選びましょう。
新しく準備する必要はありません。
お子さまの服装選びのベストとNG
制服がない場合、アイテムの色は黒がベスト。
なければ白のアイテムを選び、色柄ものは避けましょう。
黒が多くなるような装いができるとより良いです。
汚れているアイテムはNGなので、きれいにしてから着用するか汚れていないアイテムを選びましょう。
お子さまであっても、タンクトップや短パン、サンダルなど、肌の露出が多いものやどう考えてもカジュアルな装いはNGです。
ここまでで、実際にお通夜に参列する際に絶対に知っておきたい「服装」について確認できました。
ここからは、お通夜の目的と全体の流れを見て参りましょう。
お葬式の全体像をおさらい
実際に参列する前に、お通夜を含めた故人を悼む儀式について、その全体像を軽くおさらいしましょう。
お通夜、葬儀、告別式の違いとは?
お葬式は、通常2日間に渡って執り行われます。
1日目にお通夜を、2日目に葬儀と告別式を行った上で火葬場へと向かうのが一般的です。
- お通夜
親族や友人・知人など、故人と親しかった方が故人との最後の夜を過ごす場。
近年では、日中の告別式に参加できない方が参列する場合も多い。 - 葬儀
故人の冥福を祈る宗教儀式が執り行われる。 - 告別式
一般の方にも開かれたお別れの場であり、近所の方や会社関係の方など故人とゆかりのあった人が参列するため、社会的なお別れの場とも表現できる。
出棺前の最後の儀式でもあり、故人との最後のお別れの場となる。
続いて、本題である「お通夜」について掘り下げて見ていきましょう。
お通夜は、故人とお別れをする場
お通夜は、ご親族や友人・知人など故人と親しかった方が参列する儀式で、故人とのお別れのための時間です。
基本的に、葬儀・告別式の前日に行われます。
「通夜」という名前の通り、本来は夜通しろうそくを絶やさず故人とともに過ごす儀式でした。
かつて、医療がまだまだ未発展だった時代には稀に葬儀中に蘇生する方もいたため、夜通し様子を見て、蘇ることを願っていたという側面もあったようです。
ただ、近年ではこのように寝ずの番をすることはほとんどなく、1~3時間程度で散会とする「半通夜」が一般的となっています。
仕事終わりの方にもご参列いただきやすいように、18時ごろから開式されることが多いです。
このような傾向であることもあって、日中に行われるのが一般的な告別式に参加できない方が、夕方から行われるお通夜に参列される、という場合も増えてきています。
訃報をお知らせくださった方に、どのような形式でのお葬式になるのか確認できれば安心ですね。
お通夜の具体的な流れを確認
- 開式の約30分前に開場
僧侶、親族、参列者が全員席についている状態で開式するので、それまでに集まって着席しておく必要があります。
受付もあるため、遅くとも開式時間の20分前には会場に着いているようにしましょう。 - 受付
受付で芳名帳に記帳し、香典をお渡ししてお悔やみの言葉をお伝えします。 - 読経
僧侶による読経が行われます。
宗派によっても変化しますが、おおよそ30分程度です。 - 読経に合わせて順にご焼香
式場のスタッフの指示に従い、順にご焼香を行います。 - 説話を拝聴する
僧侶による説話を拝聴します。 - 喪主挨拶
この場で、翌日の「告別式」についてのお知らせがあります。 - 閉式
ここでお通夜自体は終了となります。
多くの場合、続いて「通夜振る舞い」があります。 - 通夜振る舞いをいただく
通夜振る舞いとは、お通夜に来ていただいた方へお礼の意味も込めて振る舞われるお料理のこと。
お誘いがあった場合には断ることはせず、短い時間でも席につき、箸をつけるのが参列者のマナーです。
お酒が振る舞われる場合もありますが、車で訪れた場合などにお断りするのは問題ありません。
最近は、お通夜の日程に余裕がある場合も
お通夜は、ご臨終当日の夜に親族だけで行う「仮通夜」と、その翌日に弔問のみなさまをお迎えして行う「本通夜」があります。
葬儀・告別式の前日に行われるお通夜は、「本通夜」に当たるものです。
ご臨終当日の夜に「仮通夜」でその翌日が「本通夜」なら、参列するお通夜はやっぱり「ご臨終の翌日」なの?と思いますよね。
もちろん、「ご臨終の翌日」にお通夜が執り行われることもありますが、これは決まりごとではありません。
以下のような場合には、お通夜の日程は後ろ倒しになる場合が多いです。
- 午後に亡くなられた場合
葬儀の準備を整えるのが難しいため、翌々日へと1日後ろ倒しにしてスケジュールを立てるのが一般的。 - 六曜を気にする場合
特に、友人を連れて行ってしまうとして縁起が悪いと言われる「友引」を避けて日程を決める場合は多い。 - 葬儀社や会場に空きがない場合
近年ではお通夜を自宅で行うことはほとんどないため、会場の都合がつかない場合には日程が後ろ倒しになります。
このように、いくつかの原因があり「お亡くなりになった翌日、すぐにお通夜」といったことは少なくなっているのが現状です。
基本を守り、相応しい装いで参列しよう
ここまで、お通夜に参列する際の服装のマナーと、お通夜の基本的な知識について解説してきました。
日本の冠婚葬祭はマナーがある程度しっかりと決まっています。
大変だなと思うこともあるかもしれませんが、裏を返せば、決まりごとやマナーの意図を理解し基本を外さずに準備をすれば、喪に服す場に相応しい装いで臨むことができるということです。
時間のないなかとは思いますが、ご紹介した基本を守って準備をされてみてくださいね。
みなさまが安心して、故人との最後のご挨拶に集中できますように。